不定期連載 やせるっ 作 おっさん
プロローグ 1993年 春
「ちっ」
ここはバスの中、バイトへ向かうために混み合う中で乗り込んだところだ。
舌打ちをしたのは、右隣の女性。
もう、削られるほど何にも残ってない空っぽのキモチ。
(すみません、すみません)
声にださず、何度か謝った。
僕の体重は118キロ 百貫と揶揄される対象にまで育った17歳。
そうだよね。こんなデカイのとなりに来たら鬱陶しいだろう。わかる。
まぁ、いつものことだ。
バイト先は京都駅にあるうどん屋。かれこれ2年半つづいてる。
季節的に大学生だったバイトの先輩が就職を決め、入れ替わりで新しい人が何人か入ってくる。
今日はその日。
「おぃ、ジン!今日は厨房に1人、あとホール係に2人入ってくる。お前も古株になったから頼むぞ!」
ケツに蹴りくらいながらの店長からの言葉。 頼りにされるのは嬉しい。
少し張り切った。
新人たちは今日はほぼ棒立ちで観てただけ。 こんな日に限っていつもより3割ほど客数が伸びた、なのに人員は新人たちを頭数に入れたシフトだったので回るわけがない。
2キロは減ったくらい疲れた。
営業終了と同時に心でつぶやいた。
「5キロ減った。疲れたん」
口ではこう放ったらしい、
みんなに聞こえたようで新人も交えて一同大いにうけた。
デブが得する一面だな。
きっかけにして、新人たちも打ち解けて皆大いに盛り上がってらっしゃる。
役に立ったんだな。
そうこうしてる間に店じまいをし、離れた更衣室へ向かう。これはさすがに案内しないと行けない。更衣室は大きい道路を挟んだ京都タワーの真裏にある。
新人たちは今日はトイレなどで着替えてきたみたい、初日の人が誰しもが経験する。
「ジン、これ更衣室のロッカーの鍵。ついでに連れて場所案内しろ」
店長は鍵を持ったままその腕を水平に、掌はグーに閉じられせの姿勢を保ったままこっちに走ってくる。
ラリアットを食らった。
そして、更衣室に向かう途中、地下から地上へ出る階段でころんだ。
ぁ〜疲れてんかな。
上で仲間たちが指さし笑ってる。
「大丈夫です〜?」
差し伸べる手が視界に入ってきた。
誰なのか判断もしないうちに
僕は好きになってた
諦めたキモチを底から掴んだ。
顔をあげる。 誰?
ホールの新人で入ってきた。
柳井 美希
彼女だった。
つづく?正直、反応しだいだヽ(´o`;